REPORTレポート

Vol.5 映画づくりから始まる地域づくり

2024.05.16

『桜田門外ノ変』映画化支援
 平成18年1月、茨城県庁の方から「水戸藩をテーマにした映画を起爆剤としたまちづくりをやらないか」との誘い。映画は多くの方が鑑賞します。波及効果は桁違いで、まちづくりをやるなら、映画を絡めた方が何倍も効果的!  水戸と言ったら黄門様。黄門様の映画を作ろうと、仲間たちと一年間議論しました。今でこそ冲方丁さんの『光圀伝』がありますが、当時は原作となるベストセラーがなく、地域活性に活用できる歴史的資源も少ないことから、断念しました。  しばらくプロジェクトは停止状態でしたが、平成19年の秋になって吉村昭原作の『桜田門外ノ変』でいこうと再度連絡がありました。  桜田門外ノ変。安政七年(1860年)3月3日、季節外れの大雪の中、水戸脱藩士を中心とした総勢18人が、江戸城の真ん前の桜田門外で、時の首相である大老を、しかも関ヶ原以来、徳川軍団最強の誉れ高い譜代筆頭の彦根藩主・井伊直弼を襲撃する事件です。これにより幕府の権威は大きく崩れ去り、事変から7年後に大政奉還、そして王政復古の大号令。時代を大きく動かした幕末最大の大事件です。これらを題材にした映画を作ろう、ということです。  こうして地域発案型映画『桜田門外ノ変』を起爆剤とした活性化プロジェクトが始まりました。郷土の歴史や文化等の資源を再認識することで、地域への誇りや郷土愛の醸成につなげ、ふるさとの活性化に貢献することを目的に水戸藩開藩四百年記念『桜田門外ノ変』映画化支援の会を設立、会長を元参議院議員の狩野安先生にお願いし、官民と地域が一丸となって様々な事業に取り組みました。  監督は『男たちの大和』の佐藤純彌氏に、また主演を大沢たかお氏に依頼。邦画史上最大規模のオープン・ロケセットを千波湖畔に建設し、ここを拠点に県内11市町村でロケを敢行。エキストラ募集には3000人以上が、オーディションにも400人以上の応募があり、撮影中には5000食以上の炊き出しを提供。地域発案型としては異例の超大型時代劇映画で、まさに地域の夢を載せた大きなプロジェクトとなりました。平成22年秋には東映を通して全国300以上の映画館で公開され累計80万人もの方々が鑑賞。撮影終了後に一般公開されたオープン・ロケセットへの来場者数は、32万人に達しました。  映画づくりに合わせ、原作感想文、ロケ地や俳優の推薦コンクール、メイキング映像写真展や幕末映画祭なども開催。また、地域資源の再発見を目的に、歴史講座や史跡を巡るツアー、全長100kmの水戸八景ツーリング(現在の水戸八景グルメライドの原型)、自然と文化講演会、自然観察会、各種シンポジウム、おもてなしセミナーなど、70回以上のイベントを開催し、延べ6000人以上もの方々に参加いただきました。  このプロジェクト以降、県内では映画づくりを地域振興に活用する例が増え、ロケ地観光を含め、今後に期待がもたれています。

この記事を書いた人

三上靖彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

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