REPORTレポート

Vol.25 実験結果とシンポジウム

2024.05.28

 3月23日(土)、「水戸まちなかデザインシンポジウム」をオンラインにて開催しました。令和3年から毎年開催していて、今回で4回目。
 前半は、改めて水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会のこれまでの活動と未来ビジョン「挑戦心を育む、コンパクトなまちなか暮らしを取り戻す」について説明し、その上で、今年度の社会実験「水戸まちなかリビング作戦」の取組内容や検証結果等を報告しました。関東初のチャレンジとなった国道の歩道部分での空間活用については、計5か所でパークレットの設置が実現しました。またそれらを含めた大通りの空間活用に関して、懸念されていた交通面・管理面での問題は全く生じませんでした。つまり安全に運営されたことなどを報告しました。
 後半は、パークレット製作に協力頂いたデザイナーの本谷由香さんと寺門千尋さんをゲストにお迎えし、また協議会の金会長や田中副会長からのご意見も交えながら、これからの取り組みについてディスカッションしました。

シンポジウムを踏まえて
 今回の社会実験では、これまでの縁や人脈による新たな連携によって、短期間でパークレットの製作と設置が実現できました。これからは、いかに活動を自分ゴトとして考え易くするか、そしてそれをどう仕掛けるかを考えていくことが重要になります。自分が運営側になる感覚を持たせるような仕掛けも必要です。自身の専門性や趣味等に関係することなら関わり易いため、今回のパークレット製作のような具体的なテーマがあると、自分ゴトとして捉え易いようです。高校生を始めとする若者には、地域学習として活動に関与してもらえると、地元への愛着形成にも繋がるはずです。
 カーボンニュートラルやネイチャーポジティブといったグローバルな考え方を踏まえた取り組みにしていくことも重要です。このような視点は、企業の社会貢献意欲に繋がり、それが企業との連携を生み、協議会としての安定財源の獲得にも繋がります。

新しい展開へ
 それでは、これからどうするか。
 令和2年から始まった水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会の活動も、この春で5年目を迎えました。水戸のまちなかの方向性としての未来ビジョンを策定し、そのビジョンを踏まえた継続的な社会実験やプロモーション活動も、水戸まちなかデザイン会議を中心とするメンバーのこれまでの活動により、そのノウハウが蓄積され、軌道に乗ってきました。協議会の活動そのものの社会的認知度も向上してきて、これらをうまく統合し連携し継続すれば、実装に向けて大きくステップアップする可能性も見えてきました。
 でもまだ、商業従事者を始めとする当事者の多くが、まちなかの未来創りに主体的に関わろうとはしていないのが現実です。新しい何か、新しい挑戦が生まれるためには、一層の地域間・施設間連携の必要性、当事者の主体的参加の必要性を感じます。
 しかしそのためには、まちなかに住む人や、まちなかに関わろうとする人、また周辺の施設等に対し、「もっとまちなかに関わりを持ってもらいたい」と言う一方的な、他力本願的な考えでは上手くいきません。一層の連携促進のために、街は、まちなかに何ができるのか。「まちなかサイドからできること」を、もう一度考えてみる、模索してみる必要がありそうです。

まちなかからのアプローチ
 現状のまちなかを歩いてみて、次のようなことが大切だな、と感じます。
 まちなか自身が、周辺施設(市民会館、芸術館、京成百貨店など)のイベントに、もっと関心を持ち、もっとPRすべきだ。
 まちなか自身が、水戸の歴史(水戸徳川家、黄門様、幕末維新など)に、もっと関心を持ち、それぞれが語れるようにすべきだ。
 まちなか自身が、水戸の街のプロスポーツ(J2の水戸ホーリーホック、B1の茨城ロボッツなど)に、もっと関心を持ち、一緒に盛り上がれるようにすべきだ。
 水戸公衆放送と言う、全国的に希少価値の高いローカルメディア(街頭放送)を、もっと有効に活用し、エリアとしての価値向上に繋げるべきだ。
 このようなことを考え、新しい取り組みに挑戦したい、と思っています。本年度は、試行・実証実験を進めながら、様々な施設や地域との連携のあり方についての検討を進めたいと思います。試行・実証実験では、MitriOを始めとする多様な施設や様々な主体との連携、関わりによる公共空間の利活用、「連携促進のために、まちなかに出来ることは何か」を模索したいと思います。
 ゴールデンウィークには、コロナ騒ぎで中断していた「水戸まちなかフェスティバル」が復活し、たくさんの来街者で賑わいました。私たちが設置したパークレットも、まちなかの大切な「装置」としての役割を果たしていました。私たちは、この賑わいを取り戻したい、と思っています。

この記事を書いた人

三上晴彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

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