REPORTレポート

Vol.20 水戸まちなかリビング作戦

2024.05.16

南町2丁目の裏通りを中心に
 挑戦心を育む、コンパクトなまちなか暮らしを取り戻す。これが私たちの描く水戸のまちなかの未来ビジョンですが、その実現に向け、南町2丁目の裏通りを中心としたエリアで、令和3年より継続的な社会実験「水戸まちなかリビング作戦」を実施しています。

継続的な社会実験
 一回目は令和3年の秋。裏通りを歩車共存道路とするためのストリートサインの設置や、居心地の良い場づくり、そして空間利活用の実験(まちなかチャレンジ)を行いました。令和4年秋の二回目の実験では、まちなかの「新しい日常」としての快適な居場所(=まちなかリビング)づくりに加え、「歩くにはちょっと遠い」と出不精の方々へ、小さなチャレンジを後押しするものとして、自転車利用を促進する駐輪場の設置の他、新たな移動手段としてのグリーンスローモビリティ(グリスロ)の導入実験も行いました。時速20㎞で走る環境に優しいモビリティ。ずばり、6人乗りのゴルフカートです。裏通りを中心とした周回ルートを20分で走行。停留所も12か所設けました。

プロモーション活動
 社会実験と並行して、商店街や居住者、通勤通学者らに対し、「まちなかが本当に変わるんだ!」という気運を高め、自分事として取り組んで頂けるよう、プロモーション活動も実施しました。商店街やマンション管理組合の理事会の席にお邪魔し、また個別に企業や学校を訪問し、私たちのビジョンや社会実験に対する共感の輪を広げる取り組みです。また実験期間中には、南町2丁目や3丁目の商店主と交流し、SNSによる情報発信も。さらに、水戸のまちなか暮らしを満喫している5組の方々の暮らしぶりを紹介するプロモーションムービーとリーフレットも制作しました。これらの取り組みを通して、ようやくまちなかの方々との関係づくりが形になってきました。

社会実験の検証結果
 さてさて、反響や如何に?実験によって新しい日常を体感した方々へのアンケートや通行・滞留調査などの結果を検証すると、評判はとても良く、ビジョンで提示した「居心地が良く歩きたくなるまちなかづくり」については、地域の方々から概ね理解が得られていることが分かりました。用意した居場所は、会場利用者から多くの賛同が得られ、日常の居場所として好ましいものであったようです。好評かつ常設化できるものは常設化し、少しずつ居心地の良い場所、新しい日常を増やしていく必要があります。期間中1000人以上の方が利用したグリスロについては、多くの継続要望が確認できました。本格導入を見据えた実験を継続する価値はありそうです。若手メンバーが中心になって、まちなかの店舗情報を掲載したインスタグラムは、4000超のアカウントの関心を引きました。  それでも、まちなかで暮らす方々や、まちなかへ通勤・通学する方々の多くが、関心を持って実験に関わって頂くまでには至りませんでした。わざわざ出歩き回遊したくなる取り組みには、まだまだなっていなかったようです。令和4年度に培った地元との関係を活かし、令和5年度の水戸まちなかリビング作戦では、まちなかの方々と一緒に実験づくりを進めたい、と考えています。

この記事を書いた人

三上晴彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

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