REPORTレポート

Vol.3 まちづくりから「まちつかい」へ 街を使い倒す

2024.05.15

使うことに重点を置いた プロジェクト
 平成15年のまちづくりNPOの立ち上げ早々、水戸芸術館の大津良夫事務局長(現副館長)から、リノベーションに関する共催事業のお誘いを頂きました。リノベーションについて、当時は「古いものを活かし、アートのテイストを加味したもの」と言った洒落た解釈がなされていました。  芸術館では翌年、平成16年に開催予定の二回目の「カフェ・イン・水戸」のプレ企画として、空きビルや空き店舗に新たな価値と需要を創出するリノベーション手法を紹介したい、とのことでした。建築家の青木淳氏や実業家の黒崎輝男氏ら、錚々たる方々による連続講座が、WILL最初のプロジェクトでした。  平成16年7月には「弘道館と雅楽に親しむ夕べ」を開催。当時、弘道館を始めとする県内の重要文化財で、このようなイベントが開催されるのは初めてでした。演奏は、横山円音(みつね)さんによる琵琶と、むすびひめのお二人(田島和枝さんと中村香奈子さん)による笙と龍笛。とても美しい演奏会をたくさんの方に鑑賞いただきました。  さらに、前年の連続講座がきっかけとなり、8月から「セントラルビル創業支援プロジェクト」が始まります。築45年のアパートをリノベーションしてチャレンジショップに。古い建物の特徴を活かしながら再生した水戸市五軒町のセントラルビルで、創業を支援するプロジェクトを立ち上げました。市内の飲食物販の経営者や建築士らが、コンサルタントチームを結成、創業者をお店づくりから経営まで全面的に支援しよう、というものです。  これらは15年以上も前の事業ですが、今となっては当たり前になりつつある「使う」ことに重点を置いたプロジェクトです。  日本の人口減少に伴い「モノ余り」が発生しています。しかも、若者が減って高齢者が増えています。つまりニーズの変化に伴って余っている施設や場は、存在するだけでは価値がなく、どのように「使うか」を考えることで宝物に変わるのです。

街を使い倒すことで価値を創出
 別の捉え方をすると、例えば欧州の街角。その土地の人々がその土地の衣食住を満喫しています。わざわざ来訪者のための観光開発などはしていません。彼らは、自分たちの街を使い倒して、ありのままの暮らしを見せているだけですが、それが素晴らしい。私たちの日本でも、そろそろ、大きなプロジェクトに頼らず、今ある街の資源を大切にして、街を使い倒すことで価値を創出したい。そのための仕掛け、「まちつかい」こそが、これからの街を元気にする鍵となります。

この記事を書いた人

三上晴彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

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