REPORTレポート

Vol.24 大通りで「ほこみち」試行

2024.05.16

「ほこみち」制度の試行
 水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会が設立された令和2年5月、道路法が改正されました。新たに創設された「歩行者利便増進道路」(通称ほこみち)制度により、道路の占用許可が柔軟に認められることになりました。「道路空間を街の活性化に活用したい」「歩道にカフェやベンチを置いて滞在空間にしたい」。このようなニーズに応えるものです。協議会では地元からの要望も踏まえ、令和5年度の社会実験「水戸まちなかリビング作戦」では、大通りの歩道部分にて「ほこみち制度」を試行することとしました。  コロナ特例で実施した沿道店舗のオープンテラスの常態化を目指したい。歩道での屋台、露天、キッチンカーなどによる仮設的な店づくりを促進し、場づくりやコンテンツ導入のハードルを下げてみたい。歩行者の休憩スペース、イベントスペース(ステージ、人工芝生)、駐輪場などを設置したい。歩道部分のこのような利活用で、まちなかに多様な「挑戦」の場ができるはずです。場所は、南町に銀杏坂まで含めるか。新市民会館周辺も加えるか。また、これまでの実験期間は3週間程度でしたが、ほこみち制度の試行はもっと長い方が良いかも知れません。

占用許可と使用許可
 大通りを利活用するには、国土交通省の常陸河川国道事務所から占用許可を、水戸警察署から使用許可を得る必要があります。占用許可の協議は難航しました。歩行者や自転車のための有効幅員を4m、点字ブロックから60㎝の離隔を確保した上で、利用区域を設定します。これは結構大きな制約条件です。そもそも道路や歩道は、人や車などの通行を目的としているので、それ以外の使用には基本的には適さないのです。  昨年の6月から進めてきた協議は、年明け1月末にようやくまとまり、許可が出ました。常陸河川国道事務所や水戸警察署の方々には、とても好意的かつ前向きに検討頂きましたが、それでも協議が長引いたのには理由があります。①関東圏内の国道で「ほこみち」の前例がなく検討に慎重を要した。②協議会が占用物件の維持管理を適切に行えるという根拠が乏しい。③G7広島サミットに合わせて市民会館で開催された「内務・安全担当大臣会合」の関係で年末の道路占用の許可が下りない、など。

実験概要
 このような経緯から、2月から始まった実験では、着実に実績を積むことを最優先に、また、大通りの魅力向上に取り組む協議会の認知度と信頼性向上に重点を置きました。そのため、安全性に最大限配慮し、備品の製作や設置については、段階的に参加型のワークショップ形式で、イベントも組み込みながら行いました。メインの設置物であるパークレットは、茨城デザイン振興協議会や文化デザイナー学院の方々にデザイン面等で協力を頂き、水戸まちなかデザイン会議を中心としたメンバーによるワークショップで組み立て、設置しました。まちなかに関わる方々を交え、占用区域の線引きからの会場づくり。徐々に会場を作っていくプロセスそのものも実験の大きな要素です。まちなかでの挑戦企画「まちなかチャレンジ」も募集しました。地元の方々にはパンフレットを配布、ご案内を兼ね、実験期間中の協力を依頼しました。  3月23日には「第4回水戸まちなかデザインシンポジウム」を開催し、実験結果の報告や次年度に向けたアクションについてディスカッションしました。この内容については次回! ※パークレットとは、道路の一部を転用して作られた歩行者のための空間で、歩行者の憩いや賑わいの創出を目的に設置される施設。

この記事を書いた人

三上晴彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

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