REPORTレポート

Vol.2 まちづくりNPOの設立

2024.05.15

 その土地に根差した人・もの・産業・文化・暮らしを大切に、それらを活かし、将来へ向かって成長してゆくのが「まちづくり」です。そのような、地域が主役のまちづくりを「地域で生活する私たちの手で進めたい」「地域の人たちの手でまちを作り育てたい」「私たちのまちの物語は私たち自身の手で描きたい」という思いを込め、平成15年5月に特定非営利活動法人「茨城の暮らしと景観を考える会(略称WILL)」を設立しました。まちづくりとは言い換えれば「生活提案」です。その意味で、生活・暮らしに関わる多様な立場の多様な専門家を有する横断的なメンバー構成による組織づくりと運営を心掛けました。 具体的な活動として、「景観部会」「農村部会」「水戸の街なか部会」の3つの部会を設け、行政と民間の中間に位置するNPOならではの特性を活かし、行政や民間では手の届かない事業を展開したのです。景観部会では景観研究会を開催しました。景観は、田園的なものから歴史的、都市的なものまで多様なため、行政内部の組織の枠組では、その対応は難しいようですが、NPOなら横断的な組織づくりが可能です。県庁内の関連部署と30市町村ほどが連携した研究会を進め、景観シンポジウムも開催し、平成17年6月には県から景観整備機構に指定されました。 農村部会では、県農林水産部や観光物産課等、行政の方々との懇談の場を設けたり、農業実践大学校との勉強会も開催しました。観光と農業の二つを切り口にしたシンポジウムも開催し、大盛況でした。参加者は、行政、民間、市民団体がちょうど3分の1ずつ。新しい地域づくりが「3者の協力で進んでゆく構造」がはっきりとしました。 水戸の街なか部会では、水戸芸術館と「街なか再生のための連続講座」を開催、また「水戸空間診断」という冊子も発刊。中間組織ならではの視点が好評で、平成20年9月には水戸市から中心市街地整備推進機構に指定され、翌10月には水戸商工会議所と共同で水戸市中心市街地活性化協議会を設立することになります。 正式名称である「茨城の暮らしと景観を考える会」は、少し固めでお役所受けする名称ですが、呼び易い一般受けする愛称も考えました。それがWe=私たち、Ibaraki=茨城、Life=暮らし、Landscape=景観)の頭文字をとった「WILL」。中間組織だからこそ実現できる「新しいまちづくりのカタチ」がまぎれもなく、ここ水戸にはあるのです。

この記事を書いた人

三上晴彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

RANKINGレポート