REPORTレポート

Vol.23 アフターコロナのまちなか

2024.05.16

コロナ騒動が終わって
 3年間以上に亘ったコロナ騒動もようやく終息し、その間、リモートワークやネットによる買い物の急速な普及など、私たちの暮らし方や働き方は大きく変わりました。それではデジタル一辺倒か。確かに、デジタルで済むところは徹底的にデジタルで。でも、昨年の夏のお祭りシーズンには、コロナで我慢してきた反動もあって、どこも大変な人出でした。いかにデジタル化が進んでも、「やっぱりリアルに顔を合わせた方がいいよね」と言った感じでしょう。デジタルとアナログ。バーチャルとリアル。ハイテクとハイタッチ。デジタル化が進むほどに、まちなか再生には、このハイブリッドなまちづくりが大切です。

新しいお店の出店
 コロナが明けて、水戸のまちなかでは新しいお店の出店が相次いでいます。空き店舗率も25%から13%に低下。相次ぐ出店で水戸市の空き店舗補助金も底を尽き、増額されたほどです。どんなお店が出店しているのか。  まずはハイブリッド型店舗。ネット販売と実店舗での販売の相乗効果を狙ったお店が出てきました。観光の世界では既に当たり前になってはいますが、事前にネットで商品を仮想体験し、その印象で購入するも善し、実店舗まで出向き「やっぱりいいね」と追体験、確認・納得して購入するも善し。それから民宿(簡易宿所)。国内外の人が、日本中を旅して回るのが流行っています。車で、自転車で、公共交通機関と徒歩で。ネットのみで世界中から集客します。今日はこの町、明日はあの町。連泊も多く、宿泊にお金を掛けない。相部屋もOK。ホテルのように何でも揃っている必要はなく、飲食はまち歩きを兼ねて徒歩圏内にあれば十分。  次いで暮らし支援型店舗。居酒屋が比較的好調で、カフェも増えています。変わり種としてメイドカフェも。また健康志向とコロナ禍もあって需要が増えているのは、個人向けのジムや医療・保険相談のお店など。ライフスタイルの変化に対応したものとしては、コインランドリー。マンション住まいだと大きな洗濯物や乾燥が難しいものです。加えて、旅人からのニーズもあります。近場で暮らしに潤いを与えるエンタメとして、宮下銀座には寄席もできました。

これからのまちなかの景色
 新しい日常、観光、飲食、健康医療、エンタメ。それらを支えるデジタル技術。コロナも明け、市民会館もオープンし、勢いが出てきたまちなかですが、人通りを見てみると、今のところ市民会館が圧倒的な力を示し、一人勝ちの様相を呈しています。これまでまちなかのあちらこちらにたむろしていた若者たちを、市民会館の素晴らしい環境がすべて吸収してしまい、市民会館だけが賑わっています。これでは街は元気になりません。居心地が良くて、偶発的な出会いがあって、歩きたくなる。そんなアナログでハイタッチなまちなかづくりによる「新しい回遊」の創出が必要です。その方向性を明確に示しているのが、加藤喬大さん(明利酒類)メモです。これは、水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会が令和3年度にまとめた、まちなか再生の未来ビジョン「挑戦心を育む、コンパクトなまちなか暮らしを取り戻す」の中心的なコンセプトとして提示されたものです。誰しも心のどこかで持っている、何かを変えたり、何かを始めたいという気持ち。挑戦している人を支え、挑戦したい人が集まる街に。知って行って見て会って。ドキドキ、ワクワク。アナログとハイタッチの極み。まちなかって、本来そういう装置だと思います。そのために、街ができること。街がすべきこと。街が備えるべき機能とは。一つ目が「共鳴と伝播」。ワイワイ!いいね!そうらしいね!二つ目は「ゆとりと閃き」。のんびり一息、閃いた!三つめは「遊びとたくらみ」。猥雑さ、新しい何か、おやっ?  水戸のまちなかは、居ながらにして芸術文化に触れられます。歴史との出会いがあります。エキサイティングなスポーツを体感できます。少し歩けば、千波湖や那珂川の水辺を中心とした豊かな自然があります。そんなまちなかに、居心地が良くて歩きたくなるリアルな空間を随所に用意することで、共鳴と伝播、ゆとりと閃き、遊びとたくらみの場づくりが進むはずです。そして、まちなかならではの偶発的な出会いを生み、挑戦心を育むことにつながるはずです。  まちなかに住んでいる、働いている、通学している人たちが、日常を楽しむための装置として、まちなかがある。それを旅人たちも楽しむ。その日その日の暮らしのためにも、観光的にも、さらにはビジネスの場としても。まちなかが、新しいライフスタイル、新しい価値観、新しい技術に対応した、共鳴と伝播、ゆとりと閃き、遊びとたくらみの場づくりを進めることで、市民会館を起点とした「新しい回遊」を生み出していける、と信じています。

この記事を書いた人

三上晴彦

1959年水戸市生まれ。水戸第一高等学校、筑波大学第一学群自然学類、筑波大学大学院修士課程環境科学研究科を経て、さまざまな街づくりに携わる。現在では株式会社まちみとラボ代表を務め、水戸の歴史と文化、芸術を活用して、水戸のまちに新たな価値を創造し続けている。

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